日記

たなぼた的に得た三連休はあっという間に終わった。読書・映画・料理をこなすことができたのだから、文化的に過ごせたと言ってもよいだろう。

 

たなぼたと入力する前に「七夕」と誤字をしていることに気づき、なんとなく気になってスケジュールを遡ると、2か月前の7/7は永久脱毛の初回施術日だった。織姫と彦星の2人にとって特別な日は、私にとっては生まれて初めてアレキサンドライト・レーザーを両脇に浴びた日。大人の願い事は短冊に飾れるものばかりではない。金と時間を掛けた上で痛みまで伴う。祈りまくって年1回会うだけの恋人なんか、私にはいらない。無料で、無痛で、すぐに脇がつるつるになった上で、明日も会いたい。もし忘れてなかったら、次の七夕の短冊にはそう書く。

 

 

昨日に比べれば早めに起きた。睡眠導入剤を飲み始めてから強く実感しているが、飲まずに寝た朝はとても目覚めが悪い。うんざりしながら、葡萄を少しだけ食べて、またスーパーへ向った。昨晩風呂に入ったので、キャップがいらないサラサラの髪と肌を堂々と晒して出掛けた。

 

目的は昨日のリベンジだ。買い忘れた卵を買う、豚肉を買い足す。そしてなにより、自販機で500mlのコーラを2本買った失態を、成功体験で上塗りしたかった。こんなのに拘るなんて狂ってる。どうせ暇で孤独な狂人だ。

 

昨日のように無計画的に行動せず、標的の陳列棚へ無駄なく移動した。昨日は調味料の棚を20分くらいじっくりと回って何故か予定になかった七味唐辛子を買った。同じ失敗はしない。

精肉コーナーで豚肉を入手し、いつもならここで刺身の誘惑に負け中トロとかサーモンを買うが、懸命に振り切って無事に卵もゲットした。

会計時に慌てないよう、今日は事前にポイントカードをズボンのポケットに準備してある。

移動中、右のおしりが痒くなってしまったが、尻のポケットからポイントカードカードを出したり入れたりするふりをしながら自然に掻いて事なきを得た。シナリオもアドリブも完璧だった。

 

陳列棚の、あと2メートル先へいけば1Lのコーラが手に入る、というところまできて、道は阻まれた。障害物となっている大柄な男は、こちらの車線へ大きくはみ出て商品を眺めていた。スーパーやコンビニなどの狭い陳列棚ですれ違うためには、お互いが見えない中央線からはみ出ないよう配慮する必要がある。このモラルが片方、もしくは両方に身に付いていないと、事故が起きたり、殺し合いになったりする。こんなところで知らない人と刺し違えるのはごめんだ。

「すみません」と優しく声をかけ、しかし「私の意思はかなり強いです」という表情を保ちながら、身体を小さく丸め、全く退かないその男の横を足早に通り過ぎた。私がこの男くらい屈強だったなら、きっと「どけよバーカ、導線塞ぐバイトか?」とか、すぐ煽っていたと思う。腕力がないからそれなりに振る舞うだけで、本当はルールやモラルや優しさなんて語れるような人間ではないんだろうな。無駄に深く考え、傷付きながら最後のアイテムを手に入れ、ミッションをクリアした。

帰宅してすぐ料理に取り掛かった。昨日のレタスの残りと買ってきたばかりの豚肉でキムチ炒飯を作った。中華スープには待望の卵を加え、豚しゃぶレタスの残りと水もたっぷり追加した。多めに作って、冷凍うどんの汁にする予定なのだ。すばらしいアイデアだと思う。なのに、こんなのじゃ誰も褒めてくれない。

 

 

連休中、料理をする以外では、こだまさんの「ここはおしまいの地」と「いまだ、おしまいの地」を続けて読んで過ごした。

読み終わると今度は「夫のちんぽが入らない」のドラマを観た。一度やり始めたら止まらないたちなのだ。

(こだまさんや作品に関する説明は特に書きません)

 

本もドラマも、発表になった時点で「落ち着いたら読もう(観よう)」の箱へ大事に置いておいた。読んでしまえば触発されちゃうのがわかってたから。

私はいつも、新しい物に触れる時、一旦は胸の中にしまってから「今だ!」「ここだ!今やるべきだ!」という私独特のタイミング、そのタイミングでふつふつと湧き上がる謎の活力によって突き動かされる。大喜利だってそうだった。人には驚かれるけれどそんなの関係ない。

 

こだまさんの文章は、元教師だから基本がちゃんとしてるとか、辛い経験をしてるからとか、ご本人の人柄が良いからとか、そんなのを一切、全部ぶちのめして、ぶっちぎりで面白くて「面白い」が紙の上を制してるから好きだ。面白いから正義だと思う。つい「いいな、こんなふうに」と思ってしまうのだ。分不相応な夢を見てしまう。いつか私も好きだとか、面白いだとか、言われてみたい。

「今だ!いまやるべきだ!」頭に高く響く声に目眩がする。