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最終出社日

特にやることも無いと思ってたら資料の格納やここにきて急なトラブルでバタバタと過ごした。18時から外出して良い感じの菓子でも買える店を探し回ったが、19時半になっても今の気持ちをちょうどよく表せそうな品のある菓子が見つけられなくて、会社徒歩2秒のケーキ屋でマドレーヌの詰め合わせを買った。

 

 (ざっけんな、死ね)

 

会社に戻って月末恒例の小ミーティングが行われた。ひと月を振り返って反省点や成功事例や気持ちを共有する場だ。この会社はこういう機会がやたらと多い。チームのメンバー全員が、一言づつ、本当に言いたいのか、言わされてるのか、微妙な言葉選びをしながら、泥のような速度で喋る。毎度毎度、居たたまれなくなる。

事前に指示があったように、最後には私の番がきた。共有のあった通り退職する事、1年間で感じたこと(の上澄み)、反省点、良かった点、皆さんに感謝していることなどを話し、皆さまのご健闘を祈っていますと締めた。

うそばっかりだった。

喋り終えたらすぐに、良かったら皆さんで、とマドレーヌを(察して前に出て手を伸ばしてきた)新卒に手渡した。(こういう役割を新卒にやらせる文化がかなり根強く、強烈。)

二千円のマドレーヌはチームの全員に行き届いた。本当は1円たりとも払いたくなかったが、なんというか、最後の見栄みたいなもんで、傷付いてないですよ、という顔をしていたかった。二千円は、これに対する支払いだ。

 

交換、とばかりに、「花束」を渡されて思わず「なんの?」と言いかけたが耐えた。

これだけは笑ってしまったのだが、渡された花束が、ちょうど二千円程度のグレードだった。花の本数、大きさも。これで「おあいこ」か、と感じて、面白かったのだ。

 

上司の一声で、写真撮影が行われた。

花束を抱える私と、笑うチームのメンバーと、上司。おかしな話だ。心療内科では、上司とは離れた方がいいと言われた。隣に並んで写真を撮っている。この写真はこの後どういう扱いとなって、どこに保存され、いつ、誰が見るのだろうと考えていたら、撮影が終わっていて、後から見てみたら私は目を細めてるだけでやっぱり上手く笑えていなかった。

 

送別会では私が自分では絶対に選ばないタイプの、イタリアンバルが指定された。有無を言わさず、禁煙席。私の異常な程の会話テクニックで、話題を全て他人に振り分けて、盛り上げて、自分の話はひとつもせずに無事終了した。

 

店の扉を開けて出て行く時、心から「さようなら」と思った。清々しくて気持ちよかった。もう上司でも、先輩でも、新卒でも、中途でも、後輩でも、同期でもない。もう関係ない。さようなら。本当は、私、自分の話するの大好き。

 

 

 

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イタリアンバルの嫌いな所

・客層によるが基本的にうるさい

・メニューすべての味が濃い、冷奴とかきゅうりの浅漬けが置いてない

・さしてうまくないのに基本的に高い

・狭い(1番ムカつく)、隣のテーブル等との間隔が狭すぎる

・お洒落

・これは私が悪いけど、飲める酒少なすぎワロタ