良い恋の思い出が欲しかった

今の時代、昔付き合ってた人の動向なんかは勝手に目に入ったり、入らなくても簡単に探して見たりできるから、その度に胸が抉られる気持ちがする。良い恋の思い出が1つもない。断片的な良いシーンはたくさんあった。確かにあったが、終わり方が最悪だったり、めちゃくちゃに割りを食ったり、とにかく、まるっと良かった記憶として残るようなきらきらとした恋がこれまで一度もできなかった。

誰が悪いと考えたり、ああすればよかった、なんて反省する姿勢なんかもはや一切なく、過去は感情がなくなった時点で記号になるから、別にどうでも良い。

 

昔付き合ってた人が、現在のパートナーとデートしたとSNSで公開した場所に、私は少し思い入れがあった。私の中ではただの記号になったくせに、気分悪くさせやがってと心の中で毒づいたところで、相手にとって、自分だって、無味無臭、無色透明の記号になったことを痛感した。

後ろめたさがあるわけじゃないけど、やっぱり気持ち悪くてSNSでの友達登録を削除した。そして、今になって、だけど、あの頃のけんかは、私のせいだったと思う。