行かない理由

小学生の時

朝 家の前で鳴いている猫を引き入れて「猫がいるから学校は行きません」と学校へ自分で電話をして猫と遊んでいたら(兄はすでに学校へ、母親は仕事へ、父親には会ったことがない)学年主任が「猫を置いて学校に来なさい」と家まで説得しにきた事があった。もともと、母親は仕事が忙しく私に構ってられなかったのもあって、学校へは気分次第で行ったり、休みがちだったり、勝手に帰ったりする子どもだったので、目をつけられていたんだろう。

散々抵抗したけど敵うわけもなく部屋に上がりこまれ、家になぜかあったプラスチックでできた赤ん坊用のお風呂(そんなもんある?しかも2つ)に猫を閉じ込めて無理やり登校させられた。1日中ソワソワして過ごして、最後の授業が終わってすぐに、走って家に帰ったら先に帰宅した兄によって猫は逃がされていて、なんで逃した!と泣き喚いた。これからずっと一緒にいられると思ってた。寝るときは布団に入れてあげるつもりだった。

 

クールボーイだった兄に「は?そもそもなんで家に入れたんだよ」と(うちは母親の方針により動物の持ち込み一切禁止だった。今考えれば、私が無限に犬猫亀ザリガニを拾ってくるので正しい)冷静に言い返されて、さらに逆上して「外は危ないからかわいそうなんだ!!!」と言い返した記憶がある。

 

「外は危ないからかわいそう」

口を衝いて出た言葉は、今考えてみればかなり横暴で、自己中心的で偽善に満ち溢れた最悪の感情論で、幼心にどこかで「あんまり正しくないことを言ってる」自覚があった。だから、兄の規律に対する忠誠心に、より腹を立てて、大袈裟に泣いた 気がする。

「猫が危ない目に合わないよう保護するのは学校サボる正当な理由」「家に入れてもいい理由」たぶんそんな風に考えていたはず。

なんてまわりくどくて頭が悪くて自立していて正直な小学生 仮病使えばよかったのに。一か八か母親に頼み込んでみればよかったのに。

学校へ行かない理由が欲しかった、ただそれだけだったんだと思う。

そして今 同窓会に行かない理由を聞かれて「飼い猫死んだので」とメッセージを打った。打った所で思い出した。数時間だけうちにいた猫のこと、拾った猫を理由に学校休もうとした生徒にキレてた学年主任の顔。なんにも成長しない。あれから、猫を飼ったことはない。